ミャンマー教育の現状について

ミャンマー教育の現状について

こんにちは!

今日はミャンマーの教育の現状について私が知っている限りでお伝えできればと思っております。

 

ミャンマーの教育制度

覇気のないチンの生徒たち

小学校5年・中学校4年・高校2年(ただし新制度ではグローバルスタンダードに合わせようと3年間に延長される予定も導入年は不明)の合計11年と日本より1年短くなっております。しかも小学校の入学が日本より1年早いので16歳で高校卒業する生徒がほとんどです。(ただし、家庭の事情などにより小学校に入学する年齢は割とバラバラらしく、浪人生も多いので年齢は学年に紐づけて言えないケースが多いです)

 

日本のように「小学3年生」などとは言わず「グレード3」などと言ったりし、高校1年生ですと「グレード10」と言います。

 

グレード3以上の現在の教育カリキュラムは軍事政権時代に作られたものであり、ほとんどが暗記教育です(授業では生徒が記憶するために暗唱を繰り返すといった具合です) 。軍部は政権を安定させようと国民から秀才を生み出すことを防ごうとした意図があると思われます。だから記憶はできても考えて行動できる人は本当に少ないというのが実情です。例えばタクシー。タクシー運転手は道の名前を覚えることはできますが、道のりをつなぎ合わせて目的地にたどり着くことはできません。良くミャンマー人は識字率も高く優秀という記事も目にしますが、文字は読めてもそこから応用が効かないのが現状だと思います。

 

軍部時代の教育カリキュラムは未だに引き継がれていますが、現在のグレード2以下は新カリキュラムでの教育を受けています。新カリキュラムはミャンマーNLD政権がJICA各所と共同で作成したカリキュラムであり、音楽や体育なども含まれているのこと。しかし、音楽や体育を実際に教えている学校はあまりないとの声もあります。やはり上だけトップダウンで変えても肝心の教える主体である先生が変わらないと教育は変わっていかない気がします。

 

また、もう一つミャンマーの教育の特徴として僧院学校が挙げられます。家庭や地域の事情により公立学校でも教育を受けられない生徒(カチン州やシャン州などの未だに紛争が絶えない地域では子どもが戦争に駆り出されるのを防ぐためにヤンゴンの僧院に送るという例も)は無料で寮付きで勉強もできる僧院の学校へ入ることができます。そこで育った学生は僧侶にならなければいけないということもなく15歳くらいになると自立したり、公立学校へ転入することもあるそうです。この僧院学校のお陰で貧しくても最低限度の教育が受けられて識字率は高いのでしょう。

 

教える主体である先生について

先生は基本的に足りていません。もちろん都市部では足りているのですが、地方では先生になれる資格を持った人が少なく都市部から地方まで来て教えたい人もほとんどいないので先生は足りていません。

 

そして拍車をかけるのが賃金の安さ。先生の平均所得は日本円にして1.3万円。一人ならなんとかやっていけるかもしれませんが家族を養っていける額ではありません。賃金は高学年を教えれば教えるだけ高くなるので良い先生は皆高学年の先生になり、必然的に低学年は優秀ではない先生がかろうじている、もしくは足りない状況です。この現象は途上国で特に顕著です。その足りない先生をどう補うのか。素人を強制的に先生にするシステムが存在し、形だけの研修を受けた(先生)が地方に送り出されます。そんな先生の下で育った生徒は低学年のうちに勉強がわからなくなりドロップアウト、学年は上がれても高校を卒業できないという負のスパイラルが続きます。

 

賃金の安さが招く問題はもう一つあります。賃金が安いので先生は副業で個人塾を開きます。その個人塾に招き入れるために先生は公立学校の授業では途中まで教え、残りの授業を受けたかったら私の個人塾に、という流れです。よって必然的にグレード3くらいから生徒は余分なお金を払って塾に通わなければならず、お金のない生徒は塾に行けないことで学校の授業にもついていけずドロップアウト、ということになってしまいます。金持ちから金持ちへ、貧乏から貧乏へという流れはここからも見て取れます。

 

立ちはだかるセーダン試験

かろうじて高校まで上がれた生徒にはセーダン試験という高校卒業試験という壁が立ちはだかります。この高校卒業試験に合格することができなければ、中卒だとみなされ公務員になることはもちろん国内企業に就職することは困難になってしまいます。このセーダン試験を受けることができる生徒(高校まで進学できた生徒)は全体の65%。そしてこのセーダン試験を突破できるのはなんと30%です。つまり高校を卒業できるのは全体の約20%となります。僕がe-Education時代に支援していた最貧困州のチン州では合格率が10%でしたのでチン州の学生の7%の学生しか高校を卒業できないのです。

 

セーダン試験はどんなものなのか。英語/数学/化学/物理/ミャンマー語/生物(経済)の6科目(文系コースも存在するがほとんど選択する人はいない)から構成され、ミャンマー語以外は全て英語での出題です。つまり英語が苦手な学生は自動的にアウト。そして全科目で40/100を取らないと一発不合格です。物理が100点で化学が39点でもです。

ではテストの質はどうか。例えば英語。

 

・Japan is famous for its pleasant ( ).
(日本は ( ) で有名だ。)

 

これは試験の中のある問題です。( )の中に当てはまる語句を答えろとのことなんですが、富士山ですか?寿司ですか?

 

答えはどれでもいいわけでもありません。決まっています。そう、教科書の中からの抜粋なのです。教科書を丸暗記していないと解けない問題ばかりなのです。暗記教育の愚の骨頂そのものです。

 

このように決して難しいわけではないがどこか不自然なミャンマーの高校卒業試験。富裕層はそんな制度に飽き飽きして都市部のインターナショナルスクールに行き、海外の大学、そのまま海外で就職するなんてこともザラです。こうやって優秀な人材は外へと流れていっているのです。

そんな状況で私たちができること

上でご紹介させて頂いたような状況の中で私たちができることは何なのか。賃金や制度については政府や国の経済状況が変わってこないと根本的には変わっていかない気もしますし、徐々には改善していっていると思います。先日ラカイン州で日本の支援団体が400校の学校の建設を完了したとのレポートも目にしました。多くの団体や機関が力を合わせて解決して行くべき課題だと思います。

 

しかし、そんな中で僕が気になったのは教育環境よりも生徒のやる気。僕がチン州で教育支援をしている時に、「先生や教材が悪いんだ」と言いながら勉強時間は1日に4時間ほどという生徒を目にしました。そこの学校ではそのような状況が広がっていました。もちろん学習環境も大事ですが、1日に4時間の勉強量じゃ誰だって高校卒業試験には受かりません。勉強したい、しなければならないと思っていれば1日に4時間しか勉強しないという状況は生まれないはずです。

 

“あんな大人になりたいからそのためにはまず高校を卒業しなければならない”

 

そんな風に思えていないのは将来像や憧れの人物が自分の心の中にないからだと僕は思いました。僕の場合は具体的な将来像はありませんでしたが

 

「あの人みたいにカッコよくなりたい。そのためにはまず大学に行って勉強して色んな人に会わなければならない。」

 

という考えはあったので大学受験を頑張ることができました。ミャンマーの若者にもそんな憧れの人を持ち、未来に向かって突き進んで欲しい。そんな思いで僕はこのLive the Dreamを立ち上げました。

 

そう、勉強というフェーズ以前の勉強するインセンティブを与えるところに寄与することで私たちはミャンマーの教育改善に貢献していきたいと思っております!

 

以上、ミャンマーの教育に関する所感でした。

 

只今この我々のプロジェクトに対する130万円のクラウドファンディングに挑戦しています。もし私たちの活動に共感頂ける方がいらっしゃいましたら是非ご支援の方宜しくお願いできれば嬉しいです。何卒、宜しくお願い致します!!!

俺だって頑張れた。動画でミャンマーの若者に夢への道しるべを!

 

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